2024年末から、日産とホンダの提携ニュースが自動車業界を駆け巡っている。ホンダからするとメリットの薄い本件、個人的には物別れに終わると思っている。が、それはそれとして、本件を見るとどうしても一台のクルマを思い出してしまう。アルファロメオ・アルナだ。

今日はアルナについて、日産とアルファロメオの当時の状況という視点で書いてみる。

アルナとはどんなクルマ

アルナ(ARNA)は、1983年にアルファロメオと日産が提携して開発・販売したコンパクトカーです。この車両は、アルファロメオがデザインやスポーティな走行性能を提供し、日産が量産技術と信頼性の高い生産システムを持ち寄るという、両社の協力の象徴的な成果物でした。アルナという名前は「Alfa Romeo Nissan Autoveicoli」の頭文字から取られ、両ブランドの協業を反映しています。

設計と開発の特徴

アルナは、日産の「チェリー(Cherry)」をベースにして設計されました。具体的には、日産チェリーのプラットフォームを活用し、アルファロメオがその上に独自のデザインを加えた形となっています。外装デザインは、アルファロメオらしいスポーティでスタイリッシュな要素が取り入れられており、フロントグリルやエンブレムは、アルファロメオのアイデンティティを強調しています。

サスペンションや足回りの調整はアルファロメオが担当し、運転時のハンドリング性能や走行感覚にはアルファロメオ独自のスポーティなフィーリングが込められました。一方で、エンジンやトランスミッションなどの多くの基本メカニズムは日産チェリーのものを流用しており、信頼性やコスト効率が重視されました。

市場での評価と課題

アルナは、ヨーロッパ市場を主なターゲットとして展開されました。しかし、その評価は大きく分かれる結果となりました。一方で、アルファロメオらしいデザインと走行性能を求める顧客に支持される場面もありましたが、アルファロメオの高級車イメージに期待する顧客層にとって、アルナはやや大衆車的で物足りない印象を与えることになりました。

さらに、品質面での課題も指摘されました。アルナは日産の信頼性を引き継いでいたものの、イタリア国内で組み立てられたことから、アルファロメオの品質管理体制に起因する細かい不具合が発生するケースもありました。これがブランドイメージに影響を及ぼしたことは否めません。

アルナのユニークさ

アルナの最大の特徴は、2つの異なる自動車文化の融合です。日本の効率性と信頼性、そしてイタリアのデザイン性と走行性能という、異なる強みを組み合わせるという試みは当時としては非常に先進的でした。その一方で、この「融合」の結果が、アルファロメオの顧客と日産の顧客の双方に完全に受け入れられる形にならなかった点が、アルナの市場での苦戦につながりました。

生産と終焉

アルナはアルファロメオの日産との合弁工場であるイタルナ社で生産されましたが、販売台数は伸び悩み、1987年に生産が終了しました。この提携の終了は、アルナの販売不振が一因とされていますが、両社にとって多くの教訓を残しました。

提携前後のアルファロメオ

提携前のアルファロメオの状況

提携前のアルファロメオは、イタリアの自動車メーカーとしてスポーティなデザインと走行性能で知られていましたが、販売台数の低迷と経営基盤の弱体化に悩んでいました。特に、北米市場への再参入が課題とされており、グローバル展開を強化するための戦略的パートナーが必要でした。

提携によってアルファロメオが得られたもの

アルファロメオは、日産の生産技術と量産体制を活用することで、生産コストを削減しつつ、新市場への展開を図る機会を得ました。また、日産との協業を通じて、国際的な技術交流の経験を積むことができた点も重要です。

提携前後の日産

・提携前の日産の状況

一方、日産は、グローバル市場での競争力強化を目指し、多様なモデル展開を進めていました。しかし、スポーティな高級車市場におけるラインナップが弱く、欧州市場でのブランドイメージを向上させる必要がありました。また、当時の日産は国際的な提携を通じて技術やリソースの拡充を図る方針を取っていました。

・提携によって日産が得られたもの

日産は、アルファロメオのブランド力を活用することで、欧州市場でのプレゼンスを高めることができました。また、アルファロメオのデザイン哲学や走行性能に関するノウハウを学び、自社車両の開発に応用する機会を得ました。

日本でのアルナの相場

「日本人によるデザイン、アルファロメオによる品質」というコンセプトのクルマが日本で理解されるはずもなく、長年中古車市場を眺め続けていますが、アルナが出てきたのは見たことがありません。

並行輸入業者のX(旧Twitter)で見た際は、乗り出し300万円ほどでした。よろしければご参考までに。