過去に1975年生産のアルフェッタGTを所有していたことがある。この記事を書いているのが2025年1月のため、実に50年が経過した車両だ。記憶が薄れる前に、アルフェッタおよびトランスアクスル時代のアルファロメオについて記載して行こうと思う。
アルフェッタの概要
アルファロメオの「アルフェッタ(Alfetta)」は、イタリアの自動車メーカー、アルファロメオが製造した車種であり、その歴史は同社の技術的革新とスポーティなデザイン哲学を象徴しています。
以下はアルフェッタの歴史とその特徴についての概要です。
アルフェッタの名前の由来
「アルフェッタ」という名前は、「小さなアルファ」という意味で、1940年代のアルファロメオ・158/159「アルフェッタ」という伝説的なグランプリレーシングカーに由来しています。この車はフォーミュラ1の初期において大成功を収めたモデルです。
1972年の初代アルフェッタ(セダン)
アルフェッタは1972年に登場し、主に中型セダン市場をターゲットとした車でした。このモデルは、アルファロメオの新しいプラットフォームを採用し、以下の特徴を備えていました:
- トランスアクスル方式:ギアボックスとデフをリアアクスルに配置することにより、前後重量配分を最適化し、ハンドリング性能を向上させました。
- デ・ディオンアクスル:後輪サスペンションに採用されたこの設計は、高速時の安定性を向上させました。
- エンジン:DOHC(ダブルオーバーヘッドカムシャフト)方式の直列4気筒エンジンを搭載し、アルファロメオらしいスポーティな走行性能を提供しました。
クーペモデル:アルフェッタGT/GTV
1974年には、クーペモデルの「アルフェッタGT」が登場しました。デザインはジョルジェット・ジウジアーロによるもので、流れるような美しいボディラインが特徴です。その後、GTモデルは「GTV(Gran Turismo Veloce)」として進化し、以下のバリエーションが生まれました:
- エンジンオプション:最初は1.8L、後には2.0LやV6エンジンを搭載したモデルがラインアップに加わりました。
- GTV6:1980年代には3.0LのV6エンジンを搭載した「GTV6」が登場し、高性能クーペとして評価を受けました。
1980年代のモデルと進化
アルフェッタは1984年まで生産され、特にスポーティなドライビング体験を求めるドライバーに愛されました。1980年代に入ると、アルファロメオは新しい車種である「アルファ75(ミラノ)」に重点を移しましたが、アルフェッタの設計思想はその後のモデルにも影響を与えました。
そもそもトランスアクスルとは?
トランスアクスル方式とは、エンジンを前方に配置し、トランスミッションとデファレンシャルギアを後輪側にまとめて配置する構造です。この方式は以下の利点をもたらします:
- 前後重量配分の向上:車両のバランスが良くなり、コーナリング性能が向上。
- ハンドリングの改善:安定性とドライビングプレジャーを向上させる設計。
トランスアクスル時代のアルファロメオ
前後重量配分を最適化し、ハンドリングを向上させることを目的として採用されました。以下に、アルファロメオのトランスアクスル方式の採用モデルとその進化についての歴史を説明します。
アルファロメオはトランスアクスル方式を採用することで、同社のスポーティなイメージをさらに強化しました。
1940年代:トランスアクスルのルーツ
アルファロメオのトランスアクスルのルーツは、第二次世界大戦中のレーシングカーにまで遡ります。特に有名なのは以下のモデルです。
アルファロメオ 158/159「アルフェッタ」
フォーミュラ1の初期で活躍したこのレーシングカーは、トランスアクスル方式の先駆けとなりました。軽量設計とバランスの取れた重量配分が特徴でした。
1970年代:トランスアクスルの市販車への導入
アルファロメオは1970年代にトランスアクスルを市販車へと導入しました。この時期の代表的なモデルは以下の通りです。
アルフェッタ(Alfetta, 1972年)
初めてトランスアクスルを採用した量産車。
特徴:
リアにトランスミッションとデファレンシャルを配置。
デ・ディオンアクスルを採用し、優れた乗り心地と操縦性を実現。
エンジン:DOHC直列4気筒。
アルフェッタGT/GTV(1974年)
アルフェッタのクーペ版で、ジョルジェット・ジウジアーロがデザイン。
スポーティな走行性能と洗練されたデザインが特徴。
後にV6エンジンを搭載した高性能モデル「GTV6」が追加。
1980年代:トランスアクスル技術の成熟
アルファロメオは1980年代にかけて、トランスアクスル技術をさらに発展させました。
アルファ6(1979年)
アルファロメオの高級セダンとして登場。
トランスアクスル方式を採用しつつも、直列6気筒エンジンを搭載。
アルファ75(Milano, 1985年)
トランスアクスル方式を採用した最後の量産車。
特徴:
様々なエンジンバリエーション:直列4気筒、V6、さらにはターボディーゼルエンジンもラインアップ。
独特のデザインとスポーティな走行性能。
特に「アルファ75 3.0 V6」は、当時のアルファロメオの技術の粋を集めたモデルとして評価されました。
「SZ」と「RZ」
アルファロメオの限定モデル「SZ」と「RZ」は、1980年代後半から1990年代初頭にかけて登場したスポーツカーで、同社の独創的なデザインと高い性能を象徴しています。この2つのモデルは、アルファロメオとザガート(Zagato)のコラボレーションによって生まれました。
SZ(Sprint Zagato)
概要
- 製造年:1989年~1991年
- 車種:2ドアクーペ
- 生産台数:1,036台(プロトタイプを含む)
- デザイン:アルファロメオのデザインセンター「Centro Stile Alfa Romeo」とザガートの協力によるもの。
- ニックネーム:その独特な外観から「モンスター(Il Mostro)」と呼ばれることもあります。
特徴
- シャシーとパワートレイン
- ベース車両はアルファロメオ75。
- トランスアクスル方式を採用し、優れた前後重量配分を実現。
デ・ディオンアクスルを使用したリアサスペンション。 - エンジン:3.0L V型6気筒「Busso」エンジン。
- 出力:約210馬力。
- トランスミッション:5速MT。
- 0-100km/h加速:約7秒。
- デザイン
- 直線的かつ彫刻的なデザインが特徴。
- フロントのトリプルヘッドライトと大型グリルが独特。
- ボディ素材:熱可塑性樹脂(複合プラスチック)を使用し、軽量化を実現。
- 性能
- 高速域での安定性に優れ、特にコーナリング性能が高評価。
- 空力性能を重視したデザイン(Cd値:0.30)。
RZ(Roadster Zagato)
概要
- 製造年:1992年~1994年
- 車種:2ドアロードスター
- 生産台数:278台(非常に希少)
- デザイン:SZをベースに、ルーフをオープントップに変更。
特徴
- シャシーとパワートレイン
- SZと同様にアルファロメオ75をベースに開発。
- エンジンとトランスミッションもSZと同じ3.0L V6エンジンと5速MTを搭載。
- デザイン
- SZのデザインを踏襲しながら、オープントップにアレンジ。
ロールバーを備え、安全性を確保。 - ボディ素材や直線的なデザインはSZと共通。
- SZのデザインを踏襲しながら、オープントップにアレンジ。
- 性能
- 車両重量が若干増加したため、SZよりもわずかに動力性能が低下。
- それでもなお、卓越したハンドリング性能とドライビングの楽しさを提供。
これらの車両は大量生産ではなく、特定のファンやコレクターをターゲットに開発されました。トランスアクスル時代のアルファロメオは、近年高騰が進むアルファロメオの旧車群の中でも低価格で推移していますが、SZ/RZは非常に希少で、クラシックカー市場で高い価値を持つモデルです。